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コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2014年7月号「講師控え室 65

 

中学一年生の息子の机の上に、道徳の教科書があった。

読んでみると、なかなか良くできている。

「人物探訪」というページにはいろいろな偉人伝が載せられている。子供達の興味を引くスポーツ選手やノーベル賞受賞者だけではなく、ビジネス書や歴史小説に出てくるような人も選ばれている。

まず、上杉鷹山が紹介されていた。一ページを割いており、「なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」が大きく出ていた。

松下幸之助、本田宗一郎、法隆寺の宮大工として有名な西岡常一など、日本が世界に誇る偉人が紹介されている。日本人がいかに立派で優秀な民族かこの「人物探訪」を読んだだけでも理解できる。

教科書の本文は人として人と関わって生きていく中で大切なこと、今の自分自身を見つめ直し、これからどうあるべきかを考えること、誇りある生き方などが中心になっている。雑誌「致知」の鎌田實のインタビュー記事が載っていたことも驚いた。二〇一二年七月号分。鎌田實は諏訪中央病院名誉院長。記事の内容は、がんの患者が起こした奇跡の感動的な話だった。

最終章のタイトルは「日本人の自覚をもち世界に貢献する」である。

イラン・イラク戦争のさなか、イラン在留の日本人たちはトルコ政府が飛行機を出してくれたことにより、二一六名が無事にテヘランから脱出できた。ここからまず文章が始まり、なぜトルコがそこまでして日本人を助けてくれたのか、あの「エルトゥールル号遭難事件」とのつながりが紹介される。

明治二十三年(一八九〇)。トルコ船の遭難に際し、和歌山県大島村の住民総出で献身的な介抱をしてトルコ人生存者を助けた話がある。

このすばらしい教材でどんな授業が行われているのだろうと気になり、息子に尋ねると、「最近は道徳やってないなぁ。週一回の授業時間なんだけど、いつも運動会の練習でつぶれちゃってるから」

危惧したとおりである。先生が道徳の授業を軽視している。

先生だけでなく、この現場の実情を校長も教育委員会も文部科学省も知っている。知っていて正そうとしない。やはり道徳を軽視しているのである。

ではなぜ軽視するか。先生は教職課程で道徳指導法の単位を取っただけで素人同然。つまり素人だから苦手で、苦手だから逃げる。

教師不在。立派な道徳の教科書が泣いている。(浜中孝之