アイウィル 社員教育 研修日程

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2015年4月号「講師控え室 74

 

管理者能力養成研修の中に「管理者の三大任務」について、意見を出し合いながら考える課題がある。

この三大任務について、まず研修生にはどんなものがあるか聞いてみる。「会社の中で管理者が果たすべき任務ですよ。誰かわかる人?」と問う。

正解は一、業績を上げる、二、部下を育てるである。この二つはすぐ出る。しかし三つめが出てこない。毎回研修のたびに同じ光景を見るが研修生は「ウーン」とうなって下を向いている。

「ここで出てこないということは、普段意識していないということです。意識していなければ、行動もしていないでしょう。管理者手当をもらっている人?皆さんは果たすべき任務を果たさないで、もらうものだけはもらう。給料ドロボーだなあ」とあおる。

この出てこない任務の三番目が「トップ(上司)の補佐をする」である。答えを明かすと研修生は皆、「アーッ」と言い、何でわからなかったのだろうと悔しそうな表情を浮かべる。

しかし意識すらしていないのだから、これが任務という実感もわかない。それどころか、日常ではその逆を行っていることが多い。上を補佐するどころか、その足を引っ張っている。

経営者側に立つことができず部下に目線を合わせる。部下の仲間になり部下の代表者となって上と掛け合い「私は上と下を結ぶパイプ役だ」と間違った“任務”を行っている。

補佐をするとは何をするのか。研修生に補佐の意味を聞いてみる。部長・課長のみならず専務・常務クラスでも正確に答えられない。「上司の代行をする」「上司のいない場面を取り仕切る」程度の答えしか出ない。

補佐の本質とは、汚れ役をかって出ることである。誰もが嫌がる、面倒くさがることを「私がやります」と名乗り出て実行することである。

アイウィルの読書リストの中から二冊の本を紹介する。補佐に徹した男の人生を、歴史小説から学んでもらうためである。堺屋太一著「豊臣秀長」。秀吉が天下を取るため、表舞台には一切姿を見せず、黒子役に徹した弟である。

司馬遼太郎著「燃えよ剣」では土方歳三。隊員から蛇蝎のごとく嫌われ、憎まれ役に徹し、隊長の近藤勇を立てた。

仕事をしていれば、人から認められたい、尊敬されたいと願う。自分がスポットライトをあびたい。だから裏方の補佐は積極的にする気になれない。

しかし上に立つ人は、部下から嫌われても憎まれても、目立たなくても、上の補佐を任務として責任を持って果たさなければならない。
(浜中孝之