アイウィル 社員教育 研修日程

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2015年11月号「講師控え室 81

 

九月の東京完成合宿において、三誓暗唱の最高記録が出た。

「リーダーシップ三誓」、タイムは十二秒。驚異的なタイムである(過去の最高タイムは一三秒一二)。

二位の研修生は気の毒だった。タイムは二十二秒。普段の完成合宿なら楽勝でトップを取れる記録である。しかし十二秒という超人的なタイムの前には霞んで消えてしまった。

驚いたのはタイムだけではない。その研修生は第一ステップ二泊三日の試験は二十一点の不合格。三日間では第一ブロックしかまともに覚えられなかった。第二ブロックはほんのさわり程度しか言えなかったのである。

あらためて歴史を塗り替えた研修生と、見守ってくれていた上司の方々、支えとなったご家族、そして担当した兼頭講師に敬意を込めて拍手を贈る。

三誓暗唱という課題は往々にして「ウサギとカメ」が発生する。スピードの速いウサギが油断して、のろいカメに負けてしまう話である。

Sランク四十五秒合格、Aランク六十秒合格の研修生が、そのまま完成合宿においてもトップで卒業する割合はそれほど高くない。「できる」という自信を勝ち得たことは大きいが、それが油断につながってしまう。人の心の弱さである。自分の能力に溺れてしまう。

不合格だった研修生はどうか。ただでさえ弱点欠点を目の前に叩きつけられる三日間。「覚える能力がない」「他の人より劣っている」とますます劣等感に苛〈さいな〉まれる。

ここで研修生は、プラス思考になれるか、マイナス思考に陥るかで進む道が分かれる。

マイナス思考の研修生は、研修期間ずっと三誓暗唱に悩まされる。覚えられない、暗唱は苦手だ…。最悪の場合、完成合宿の仮審査でも不合格となり、二度も屈辱を味わう。

最高記録を達成した研修生は違った。金メダル級のプラス思考になった。最低の自分を最高の自分に変えたい。敗北をバネとし、常人では不可能と思える努力を積み重ねた。練習回数と時間もおそらく過去最高だっただろう。

研修生は不器用な人だった。完成合宿中も審査の受け方を何度も間違えて直された。人一倍緊張していたに違いない。研修服は常に汗で滲〈にじ〉んでいるような人だった。

この研修生、西ヶ谷誠(㈱ジェーラインエクスプレス)は金字塔を打ち立て、その人生を一変させた。

人は誰でも変わることができる。人の能力は本来それほど差はないが、人の努力には差があり、努力を惜しまない人が勝者となると思った。(浜中孝之