アイウィル 社員教育 研修日程

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2015年12月号「講師控え室 82

 

アイウィルの研修では、礼儀や挨拶の徹底を重んじている。『行動四原則』の中にも、「三、自分から挨拶」とある。それは我々社会人は人間社会で生きているからである。どんな仕事であっても、相手がいて成り立つ。その中で礼儀は最も大切なものである。

研修の中では礼儀の一つとして「挨拶」の形を訓練する。姿勢・目線・声の大きさと明瞭さ・お辞儀・表情など。初めは、皆全くできない。

特にできないのがお辞儀である。お辞儀の角度が浅い、背中が丸まる、アゴを突き上げるなど、見た目の印象が悪いお辞儀しかできない。

理由の一つとして、お辞儀の意味を知らないことが挙げられる。お辞儀とは相手に対して敵意がないことを表す。また相手を敬っていることを示している。

お辞儀の歴史は長い。三世紀に書かれた『魏志倭人伝』にてすでに記録が残っている。当時は挨拶の都度、ひざまずいて頭を垂れていた。その後、大化の改新にて「立礼」が広まり、天武天皇が土下座を禁止し、立礼が定着したとされている。

ひざまずくにしろ、立つにしろ、頭を垂れる行為は変わらない。急所である後頭部を差し出し、初めて相手に敵意がないことが伝わる。「私は自分の急所を貴方に見せても、いささかの不安を感じません。それだけ貴方を信頼し、貴方に敬意を持っています」ということなのだ。

ただ頭を垂れるだけでは足りない。お辞儀が浅かったり、背中が丸まっていたりすると、楽な姿勢になり、いつでも反撃体勢が取れる。相手も安心しきれない。

上半身を真っ直ぐにして倒し、体の重心を足の親指にかけ、窮屈な姿勢をこちらが取る。それで初めて相手は納得する。戦国時代は、お辞儀に加えて左手で右手首を握っていた。刀を抜かない意思表示だったそうだ。

現代では、お辞儀ができなくても命を取られるということはない。「何もそこまで…」と思う人もいるだろう。しかしこれが日本の伝統文化であり、日本人が道徳を身につけた優れた民族と評される所以〈ゆえん〉なのだ。

明治時代の文明開化により、西洋の文化が取り入れられ、その中で「握手」が礼儀の一つとなった。そして戦後の平等民主主義が礼儀軽視の風潮をダメ押しした。

時代と環境が変わっても、お辞儀とは、人間社会で生きている以上、大切にせねばならない礼儀の土台である。

研修でお辞儀の練習を重ねるうちに、徐々に質が高まり、三日目には見違えるほど良くなる。不思議なもので、きれいな姿勢できれいなお辞儀をする研修生を見ていると、強い精神と豊かな心が伝わってくる。
(横谷大輔