アイウィル 社員教育 研修日程

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2016年7月号「講師控え室 89

 

岩手県盛岡市にある歯科医院の一社研修を行った。経営者である理事長夫妻と職員七名の計九名の陣容。

全国の歯医者の九〇%が三人以下の小所帯だから業界では“大手”に入る。

「この辺は何もないところですよ」と理事長は研修が始まる前に話していた。何もないことはなかった。理事長とその奥様の二人が“あった”。二人は教育熱心。職員への愛に溢れていた。

「うちの○○はよく物を落とすんです」「○○さんは理事長にも文句を言う人です」と不平不満を漏らす理事長夫人。(従業員のことで苦労が絶えないのか)とこちらが思うと、「でも……」と職員を認めている点や好きな点を必ず付け加える。悩みを打ち明ける話の流れにおいても職員否定の感情はない。本当に職員一人ひとりを心から思っている。

院内に掲示された職員個別の業務上目標リストを説明される理事長の院長。職員の奮闘を期待している。一方で職員一人ひとりに反省と改善点を書かせるなどをして成長を楽しみにしている。物腰が柔らかく泰然とした立ち居振る舞い。嫌味がまったくない。職員の成長ただ一点を純粋に願っていることが伝わってくる。

また研修生との出会いもありがたかった。理事長夫妻の愛を受けている人たち。健闘した。当初の印象は皆おとなしいといったところか。しかし、真面目に取り組んだ。外からきた得体の知れない講師にとまどいながらも懸命に従った。最後は明るい表情。響く声、医院に活気があふれた。

とりわけ研修中、光輝いていた人がいた。理事長夫人である。研修を参観する立場であったが講義中は積極的に発言した。返事をうながすと大きい声で「ハイッ」と答える。職員がテストに合格した時には駆け寄って抱擁する。周囲に見せる姿が常に率先垂範であった。経営者が率先垂範をして仕事をリードすることはよくあることである。社員は当たり前だと思っている人も多い。実はそうではない。“有難い”ことなのだ。

経営者は親である。職員を雇うからには職員に対して責任を負うようになる。研修には新卒職員も参加した。アパートの手配や援助をされていた。夫妻にとって職員は我が子。だから親身になれる。その言動に一喜一憂する。親は子が思いも及ばないところで苦労している。

私たちが帰る時、見送りをされた。研修生以上に頭を下げる夫妻。研修を受けない人が誰よりも深く頭を下げていた。

小川歯科の理事長、理事長夫人、そして職員の皆様、やさしい心、それにこたえる素直な心をありがとうございます。(正木元