アイウィル 社員教育 研修日程

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2017年1月号「講師控え室 94

 

郷学研修所という施設を見学した。平成二十九年の四月に行われるアイウィル主催の新入社員研修の会場。埼玉県嵐山町にある。

嵐山町は林と森に囲まれた土地である。東京の池袋駅から出ている東武東上線で一時間強。駅周辺は特に何もない田舎である。

二十年ほど前に江戸川学院の教師十余名の一括研修を行った研修会場である。東京会場での新入社員研修が盛況であり、追加の候補地にあがったため、事前に見学をした。

その施設の敷地内に、安岡正篤記念館がある。

安岡正篤は陽明学者、思想家である。昭和歴代首相の指南役を務め、三菱・住友・近鉄など昭和を代表する多くの財界人に師と仰がれていた。

管理者養成研修の読書チェックリストに著書「活眼活学」が載っている。

施設の管理人の厚意により、安岡正篤記念館を案内していただいた。「平成という元号は安岡が発案したのですが、安岡の没後に弟子で時の首相だった竹下登がそれを紹介したことで話題となりました」。

私はその事実を知らなかった。安岡は昭和五十八年に亡くなっている。ということは、昭和天皇がお亡くなりになるずいぶん前から、次の年号が考えられていたということである。無知な私には非常に驚かされる事実だった。

先日訪問した姫路の会社では「郷学研修所?埼玉県でしょ。知ってますよ。うちの子会社の社長が安岡正篤の直弟子でしたから」とサラリと言われた。

しかし、それにしてもなぜここまで有名な安岡の記念館が、失礼ながらこんな田舎にあるのか。開館はしているが、誰一人客がいない。駅からは徒歩二十分弱。不便な土地である。

「もともとこの土地は安岡が日本農士学校という、いわばエリート・リーダー養成学校を開いた場所の跡地です。この地に学校を開くことになったのは、お金がなかったからです」。

「お弟子さんの記念館はたくさんお客さんがいらっしゃるでしょうが、こちらは見てのとおりですよ」管理人はこう言って静かに笑っていた。

記念館の最奥〈さいおう〉に、安岡の書斎が当時そのままの形で残されていた。実際に使っていた座卓、筆記用具、好まれていた缶ピース、灰皿。まるで主人の帰りを待っているかのように佇〈たたず〉んでいた。

派手さは一切ない。記念館内には、地味だが燦然〈さんぜん〉と輝く功績の証が凛と展示されていた。

郷学研修所での新入社員研修は四月四日から六日まで。研修生、参観者は記念館の入館料が無料である。(浜中孝之