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コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2018年1月号「講師控え室 105

 

講師勉強会の一幕、「マニュアルに書いていないので分からない」と若手講師が言った。「教わっていない」「やったことがない」と言えば、分からないことも許されると思っている。それを恥とも思わず言う。すぐ答えを聞きたがる。自分で考える習慣がない。

知っている人が多いと思うが『ガルシアへの手紙』という有名な話を紹介する。

十九世紀末、アメリカとスペインはキューバをめぐって戦争をした。ガルシアとはキューバにいた反スペイン組織のリーダーである。

アメリカ大統領マッキンリーは、協力を取り付けるべくガルシアに手紙を届ける必要があった。重要任務で呼ばれた男がローワンという将校。大統領はローワンに手紙を渡し、ローワンは黙って受け取った。小舟でキューバに渡りジャングルへと消えていく。三週間後、ローワンはガルシアに大統領からの手紙を届けることに成功した。

『ガルシアへの手紙』は米国の作家エルバート・ハバートが記事にした。アメリカのみならずロシアにおいても読まれた。日露戦争ではロシア人捕虜が冊子を持っていた話も有名。明治天皇も訳文を読み、軍人役人に冊子を配るように命じたという。

多くの人に伝えようとした根拠はローワンの任務に向かう姿勢にある。ローワンが大統領の前で黙って手紙を受け取ったこと。何の質問もしなかった。

なぜローワンは質問をしなかったのか。考える人がいるだろう。質問をしたほうが任務を遂行しやすい。

しかし、戦況下のキューバである。アメリカ本土で、ガルシアの潜伏場所が分かるわけがない。移動もする。変装もする。偽情報も流されている。これらを予想できるならば、無駄な質問をしない。全てを自分で考える。自分で行動する。そして自分で成功を掴もうとする。何という仕事能力か。

私たちは無理難題を押し付けられた時、いい顔をしない人が大半。「何のために」「なぜ私が」「今やることか」と問い正そうとする。「難しいのではないでしょうか」とやらないように促そうとする。

自主的に動かない。考えない。困難に立ち向かわない。そもそもやる気がない。この類は若手だけに限らない。

あなたはガルシアに手紙を渡せるほどの仕事をしているか。遂行する責任を持っているか。そろそろ人頼みにしない人になってほしい。

若手であれベテランであれ、自分がなすべきことを自分で決めてやらなければ成長はしない。ローワンになれとは言わない。ただ、私たちも困難だと思ったことを一つずつやる人になろう。仕事ができる人は、つねに最小限しか人に頼らない人である。己れの思考と行動を頼る人である。(正木元