アイウィル 社員教育 研修日程

 

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2018年10月号「講師控え室 114

 

自主参集と言う言葉を耳にしたことがあるだろうか。

私はアイウィルの講師になる前は警察学校教官、つまり警察官だった。

警察官は震度五強以上の地震が発生した時には、職場に自主参集しなければならない。

自宅が崩壊した場合でも、その場でできる最小限のことをした後速やかに自所属または、それが不可能な場合には、警視庁であれば都内の近い警察署に参集しなければならない。

震災などの場合、家族も守られるべき人だ。しかし警察官はその家族を二の次にしても国民のために尽くす義務がある。

警察官は自主参集のため、防災の日、毎年九月一日には自宅から勤務地へ徒歩で参集する訓練を行っている。

平成十八年六月十八日に大阪府北部地震があった。震度は六弱。死者は四名、負傷者は四三四名、住宅の全壊九棟、半壊八七棟、一部破損二七〇九六棟。JRや私鉄は運転を見合わせた。金融機関は臨時休業、ATMも使用できなくなった。デパートなどの商業施設も臨時休業。飲食店なども大阪ガスの供給が停止したことにより米が炊けず営業を停止した。

こうした状況の中、大阪のある会社の新入社員が出社をした。会社と連絡が取れず気になった。電車で二駅、歩いて四十分程度の所に住んでいる。特に災害があった時は出社するようにと言われていたわけでもなく、規定にもなかった。

「行ってよかった」と言っていた。棚に置いてある商品が床に散らばっていた。まず、片付け、掃除から始めた。復旧には手が足りない。午後になるとアルバイトの学生が二人来てくれた。地震で学校が休みになり職場が気になって来た。三人で汗だくになって社内を元に戻した。

社員五十人の会社でその日出社したのはわずか三人。それも四月入社の新人とアルバイトの学生。私が言いたいのはつぎのことである。

地震当日の朝、駅や路上には足止めされた人が溢れた。この中で何人が歩いて会社に行こうと思っただろうか。駅構内から地上への階段を上がる人は取材に「電車が動いていなくて」と困ったような表情を浮かべていた。

丈夫な二本の脚があるのだから歩けばいいではないか。家へ戻って自転車で会社へ向かえばいいではないか。三時間かかって、五時間かかっても…。

こうしない人は責任感が弱い人、自分で考え行動ができない人である。

災害が起きたとき、警察官にように「家族を二の次に」とは言わないが、自分はどう行動するか、仕事はどうするのか考え決めておくことだ。(緑川摂也