アイウィル 社員教育 研修日程

染谷和巳の『経営管理講座』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「経営管理講座 347」   染谷和巳

 

 

いじめ調査の意味は

経営管理講座

 

子供は大きい子が小さい子を、強い子が弱い子を支配する。支配とは服従させ言うことを聞かせることである。これをすべていじめに入れたから三〇万件を超えた。文科省や学校は膨大な時間とエネルギーを投じていじめ調査を続けている。教育者が子供の本能的〝世界〟を否定して何になる。

 

 

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国民の幸福のためのトゲ削り

 

とんがったところを削っていけば丸くなる。丸い球になる。痛くない。肌にやさしい。握り心地もいい。「まあるいことはいいことだ」とみんなで声を合わせる。

「過労死ライン月間残業八〇時間」を目安に厚労省や労働基準監督署は会社を指導し、問題がある会社は是正勧告を行っている。

まだ成果は上がっていないが、政府は「同一労働同一賃金」「女子力活用」などの働き方改革を推進している。とんがりをなくしてみんな平等にする営みである。

さらに政府は〝人づくり〟と銘打って高校大学の授業料を無料にするつもりである。学校の授業料と人材育成はほとんど無関係なのだが、人材育成のために何をすればいいか解らないので、取りあえず教育費を軽くすることにした(としか思えない)。

民間団体が東京都渋谷区と組んで「貧困家庭の中学三年生の学習塾月謝分として二十万円を補助する」寄付を募っている。家が貧しいがために塾に通えない子を救済するアイディアである。この試みはたちまち全国に広がる。差別反対をトップスローガンとする市役所区役所町役場の面々が両手をあげて賛成するからである。「差別をなくす」はとんがり削りである。

財務省は地方に配分する消費税の分配基準の見直しを検討している。今までは地域の消費額や人口で分配額を決めていた。当然大都市は多く過疎地は少なかった。今後は老人と子供の比率に応じて分配する。

六十五歳以上の老人と十五歳以下の子供が多い地域はより多くの消費税分配を受けることができる。お金を使って消費税を払い、会社を経営して消費税を納めている大都市の人々ではなく、消費が少なく税金額も小さい老人子供の多い地域が得をする。弱者優遇、弱者と強者の凹凸をなくして平等にする政策である。

二十年前から文科省と教育委員会は学校での〝いじめ調査〟に精を出している。中学生七人が一人の生徒をいじめて体育館でマットに巻いて逆さ吊りにして窒息死させた事件があった後からである。

今年のいじめ認知件数は三二万三八〇八件で去年より一〇万件近く増えたそうだ。

小学校約二八万件(前年度一五万件)中学校七万件(六万件)高校一万三千件(一万三千件)。

小学校が圧倒的に多いのはアンケートで、けんか、ふざけ合い、悪口、冷やかし、中傷などをすべて〝いじめ〟に入れたからである。

アンケートを無記名で行う学校が多いので、子供は何でもかでもいじめとして書き、教師がそれをそのままいじめ件数に入れているからである。

最近中学校で教師が生徒を大声で叱るなど厳しく指導したため自殺した子がいた。子が「先生にいじめられたから死ぬ」と言っていたということで世間は教師を悪人と見做しているが、教師本人の言い分や他の生徒、他の教師の見方を加えて判断すると、教師が「いじめ殺した」とは言い切れない。

教師が生徒をいじめるケースは稀である。殴れば暴力教師として追放され、生徒が鼻血でも出せば犯罪者にされる。生徒を厳しく叱ることも許されなくなりつつある。教師は上に立つ指導者ではなく、生徒と平等の人間。そこで小学校教師などは何かするのに賛成か反対か子供の意見を聞いて授業を進めている。

むしろ生徒が教師をいじめるケースが多い。福岡の高校で生徒が教師の尻を足で蹴っている動画が流れてニュースになった。もし生徒がスマホで動画を配信しなければ、このいじめは世に出ない。教師は耐える、黙って我慢する。このように生徒にいじめられて精神を病んでいる教師は想像以上に多いのではないだろうか。

平成二十八年度の児童生徒の自殺者は三二〇人、うちいじめが原因の自殺は一〇人。大半はいじめ以外の理由で死んでいる。

関係者は「子供のけんかも許さない」といじめ撲滅にやっきになっているが、こんなとんがりを削り取って何になる。

 

 

 

自分を鍛えて死んだ気で戦う

 

また友人の荒田の話。

荒田君は小学校の時は近所のガキ大将だったが、勉強中心の中学生になり、三年になってからいじめられるようになった。

クラスの男子の中で二番目に小さく、運動が苦手でマラソンは中位で持久力はあるほうだったが、徒競走はいつもビリのほう。

一番小さい子は全くいじめられず二番目の荒田がいじめられた。それは勉強ができたからである。クラスで一、二番、学年三百名中五、六番、クラスの級長や学年委員に選ばれた。

いじめるのはゴンとセイスケ。ゴンは学年で一番の短距離選手。体格はがっちりしてたくましかった。ほとんどが麦めし、芋めしの弁当あるいは貧しくて昼抜きの子もいる中でゴンはいつも銀しゃりの大きい弁当箱を開けていた。セイスケはませた女好きの不良でけんかが強かった。二人とも勉強はできないほうだった。

ゴンは校庭の塀の影に荒田を呼び出して威張り散らし威嚇した。級長を支配していることに快感を覚えているようだった。

セイスケは女の子の家に荒田を連れて行き、女の子と大人びた口をきいて、もじもじしている荒田をせせら笑った。他のクラスの男子と取っ組み合いのけんかをしてケガをさせて勇名をはせた。荒田もよく腕をねじられ、プロレスの技をかけられた。

ゴンは商業高校に行きいじめは終わった。セイスケは工業高校に行ってからも荒田の自宅を訪れて遊びに連れ出した。荒田はいやだったが遊びにつき合った。荒田が大学に入ってからもセイスケは荒田を誘った。勤めているので金を持っており、いつも飲み食いの代金はセイスケが払った。これで荒田は完全に支配された。

荒田は柔道を習い、初段の先輩を背負い投げで投げとばした。体も人並みに大きくなり自信がついた。

ある夜、誘い出されて、「お前のようなガキは」とセイスケが高飛車に服従を強いた。荒田は胸ぐらをつかんで腰車で投げ飛ばした。

セイスケはしばらく路上でのびていたが、立ち上がって「お前、強くなったな」と言った。これでセイスケのいじめは終わった。家に呼びにくることもなくなった。

二人のいじめっ子、ゴンは五十で早世した。セイスケは六十で糖尿病が悪化して松葉杖で歩いていた。七十を過ぎた今でも荒田は二人をいい奴だったとは思えない。

いじめられていやな思いをしたが、荒田は死にたいと思ったことはない。親や教師に訴えたこともない。小さくて非力な自分が強くなるしかないと思っていた。

長い人生のためには弱い自分を鍛えていじめる相手に勝つしかないことが解っていたからである。

 

 

 

不自然の道を行けば全滅する

 

平和と安全、貧しい人を助けましょう、困っている人に愛の手を、差別反対、弱者優遇、みんな仲良く…、こんな世界を作りましょう。

もしこんな世界が実現したら人はだめになる。心身が弱くなり働けなくなり動けなくなり、かつてペストやコレラで全滅しかけたように、強い細菌に喰い殺されて地球上から姿を消す。

まあるい世界は不自然なのだ。

自然は人にやさしいものではない。洪水、大雪、干ばつ、地震、台風と天災はつぎつぎに襲ってくる。高山あり、崖あり、谷底あり、急流、荒波、砂漠あり。

日当たりのいい花のお庭やのどかな平野は限られている。

とげを削り取るとは天候も地面も人に都合がいい住みやすいところにすることである。

地球は何万年もかけて生命を育み、その調和をはかってきた。その調和を人間が破壊し始めた。家を建て道を開き木を切り倒し火を燃やし川を汚し海を汚し空気を汚した。さらに己れの繁栄のためエサとなる動植物を養殖し、害をなす動植物は滅ぼし、ついに地球上の敵は天災のみとなった。そして今天災よりも強い恐い敵がくっきりと姿を現した。〝人〟である。

いい人のために悪い人を根絶せよ! 会社は悪である。監視して儲けたお金を絞り取れ(会社の〝内部留保〟が大き過ぎる。それを社会保障費に当てろと、一部メディアが説いている)。経営者や指導者など人の上に立つ人、人を支配する人のパワハラを許すな。人間みな平等、一方的に命令したり叱りつけたりする権利は誰にもない。上の者を引き摺り降ろせ!

現在日本は政府を中心に学校も家庭もそして会社まで、この流れに乗って意気揚々と筏〈いかだ〉を漕いでいる。

転覆しひどい目に遭い「こんなはずではなかった」と嘆く日がもうすぐ来る。