コラム『講師控え室』
人材育成の新聞『ヤアーッ』より
2012年5月号「講師控え室 #39」
三月の半ば、長女の小学校の卒業式に参列した。幼稚園を卒業してから六年間、体と心、ともに健やかに成長し、感慨深い卒業式だった。
しかし違和感があった。卒業式の歌の定番は「蛍の光」と「仰げば尊し」である。私は小学校、中学校はもちろん高校でも歌った。だから歌詞をそらんじている。
長女の卒業式で歌われていたのは、「ビリーブ」と「スマイルアゲイン」という横文字のタイトルの歌である。歌詞はもちろん日本語が中心になってはいるが、英語も入っている。小学六年生には似合わない英語の歌詞。みな、たどたどしく歌っていた。
私は「仰げば尊し」を期待していたので不満だった。まわりの父兄の様子を見ると何も感じていないようで、ニコニコと当然の顔をしている。
母親にこの話をした。「いいんじゃない。仰げば尊しなんかは、子供達は歌詞の意味がよくわからないわよ」と言っていた。私はスマイルアゲインやアイビリーブフューチャーの方がよっぽど意味がわからない、と思うのだが。
「仰げば尊し」
一、仰げば尊し 我が師の恩
教の庭にも はやいくとせ
思えばいと疾し この年月
今こそ 別れめ いざさらば
二、互いに睦みし 日ごろの恩
別るる後にも やよ忘るな
身を立て名をあげやよ励めよ
今こそ 別れめ いざさらば
三、朝夕なれにし 学びの窓
蛍の灯火 積む白雪
忘るる間ぞなき ゆく年月
今こそ 別れめ いざさらば
平成十九年には「日本の歌百選」の一曲にも選ばれた。歌詞をあらためて見ても感動する。
確かに自分が小学六年生の時に歌詞を理解して歌っていたかと言われるとそうではない。古い日本語が使われていて、なんとなく意味が解るくらいのものだった。しかしそれでも子供の心に伝わってくるものがあった。
今は美しい日本語だと解る。古きよき日本の情緒と感謝の心が詩の中に込められている。
小・中学校がなぜこの“よき歌”をやめたのか理由は推測できる。日教組の教師たちが「恩」だとか「身を立て名をあげ」という歌詞に生理的嫌悪感を覚えて歌わないようにしたのに違いない。


