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コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2019年9月号「講師控え室 125

 

相手の立場になって物事を考える。よく耳にする言葉だ。

自分ではその人ではないので想像してみるしかない。

小学生の息子が足を骨折した。

自分の身近で初めて足の不自由な者が現れた。自分自身はなったことがなく、今まではもちろん他人事。世の中のバリアフリーについて考えたことがなかった。

大変そうだなとうっすら思っている程度の認識しかなかった。

息子が車椅子を使い松葉杖で歩くことで、初めて足が不自由であることの大変さを実感できた。

さらに足が不自由である者を支える、周囲の苦労と難渋が分かった。

三百メートル先の小学校に行くことも一大事。電車で移動は不安になった。ホームへ上がるのはエレベータを探さないといけない。電車に乗るときはどうすればいいのか、駅員を呼ばないといけないのか。

息子は全治一ヵ月だった。期限付きの不自由さだったので頑張れた。

この状態が無期限に続くとすれば、まわりの人の苦労は計り知れないだろう。

息子の足が治り、松葉杖が取れた日に、娘は「これで解放される」とボソッと漏らした。妻は「冷たい」と叱ったが、これが本音だろうと思った。

娘は「登下校を友達と行きたかった。それを我慢して弟の行き帰りに付き添ったんだよ」と文句を言っていた。

私も平日が休みの日に息子の小学校への送り迎えを行った。小学校への送り迎えを初めて行って、私と同じように送り迎えを行っている人たちの多いことに驚いた。まずは足を怪我している子供の親。発達障害などの特別学級の子供の親。業者に送り迎えをしてもらっている子供もいた。

テレビが異様な光景を映していた。「れいわ新選組」の二人の新人参議院議員。それぞれの車椅子を四人がかりで運び入れている。二人とも重度の障害者で生活保護費と障害者手当で暮らしている。

その二人が当選して議員先生になった。二人のために国会内のバリアフリーを進め、「賛成反対」のボタンを押せないので秘書席を隣に作るという。議員が議席の横に秘書を同席させるケースはかつてなかった。

考えさせられた。政治家の役割と資格についてよく考えなくてはならないと思った。

ともあれ人は人に支えられて生きている。骨折が癒えるまで息子は家族だけでなく級友、先生方の世話にもなった。息子は「支えられている」感謝の心を育んだに違いない。(緑川摂也