コラム『講師控え室』
人材育成の新聞『ヤアーッ』より
2014年3月号「講師控え室 61」
アイウィルの研修は厳しい。この厳しい六ヵ月間を苦労して乗り越えた人は「成長」という大きい勲章を手にすることができる。
修了生に聞くと、第二ステップの中でも一番苦労するのは「読書感想文」だという。
本を読むのに時間がかかる。その後、感想文を書く段階では時間がかかるのはもちろん「脳みそから脂汗が出てきそう」らしい。
聞く話すも脳を活性化するが読み書きのほうがさらに脳を活性化する。特に「書く」行為は脳を強く刺激する。
頭の中で文字を選んで紙に書く。解らない字は辞書で調べる。考えたことが文章になって現れ続いていく。書いた文章を読み直してまた次を書く。文字を追う目とペンを持つ手と理解する頭の三つがうまく連動すれば「考える」脳が動く。
本を読むだけでも「モノの見方や考えかたが、広まり深まる」という素晴らしい効用がある。さらに読書感想文を書くと「自分は何を感じたのか」「他人が読んで自分の考えが伝わる文章が書けているか」などを考える。それにより、本の内容をきちんと理解し、自分の考えをしっかりつかまえることができる。
苦労が大きい分、得られるものも大きいの。
最近少し気になることがある。読書感想文の苦労から逃げようとする研修生がいる。脂汗をかく時間をインターネットにたよるのだ。
そのまま全部引用する人もいれば、一部、自分の言葉に置き換えて提出する人もいる。
以前からあったのかもしれない。
その研修生らしくない文章を読んで、講師は首をかしげていた。だが自分の字で書いてあるからと見過ごしていた。
今はアイウィルにもネット引用のチェック機能ができて、八割は識別できるようになった。
他の課題はネットで調べてもかまわないが、感想文はうつしてはならない。ネットはせいぜい、他人がどんな感想を持ったのか、参考に見る程度にしてほしい。
レポート内で感想文の書き方についてよく質問がある。
それにはこう答えている。
一、心に強く感じたことを、章よりページ、ページより行とポイントを絞って書く。
二、読後の考え方の変化を書く。
三、登場人物と比較して、自分ならどうする、そう考えるかを書く。
四、作者に質問したり、登場人物に話しかけるように書く。
五、上手に書こうとしない。あくまでも研修の中の訓練。テストではない。
成長は苦労の大きさに比例する。成長できるのは苦労した人だけである。(染谷昌克)