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コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2020年11月号「講師控え室 137

 

文化庁が九月、令和元年度の「国語に対する世論調査」の結果を発表した。調査は国語への理解や意識を深めるため、平成七年から毎年行っている。今回は十六歳以上の男女約二千人が回答した。

「今の国語は乱れていないと思う」と回答した人の割合が三割(三〇・二パーセント)を超えたという。国民三人に一人は現状の国語で問題ないと思っている。国語の乱れについては過去に五回調べている。平成十一年度では一〇・三パーセント、平成二十六年度では二三・三パーセントだった。年々国語の乱れを気にしない人が増加している。

傾向を見ると、SNSの普及が関係しているという。言葉を使って表現する機会が増えた。ツイッターやメールなどの文字がその代表。直接人と話すのではない。また不特定多数の人に発信できる。今後も多少の乱れを許容する人が増えるだろう。

新語が増えた点も一因として挙がる。パワハラやアラサーなどの略式合体外来語。ミスる、ディスるなどの英単語に「する」を足した動詞。ソーシャルディスタンス、ロックダウンなどの時世に馴染んだ言葉がそう。

言葉の数が増えれば、言葉は多様化していく。扱う人も多様性を持つようになる。今は多様性もダイバーシティと言えばよいのか。言葉とは国語だが、国語(日本語)本来のカタチが捉えにくくなっている。

『枕草子』で清少納言が言葉の乱れに触れている。平安時代に若者の言葉遣いを嘆いている。乱れは若者から生じる。若者は多感で変化に柔軟。新たな風を吹かせる。国語が変容するのは構わない。言葉は人とともにあるのだから。

一方、変容してはいけないことがある。言葉の意味。意味を間違えて用いられる言葉はコミュニケーションの齟齬〈そご〉をきたす。

世論調査では「浮足立つ」を誤った意味で使用する人が約六割もいた。「不安や恐れを感じ、落ち着かずそわそわしている」が正しい意味だ。「喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている」の誤った意味で用いる人のほうが多い。

正直に言う。私も誤った意味で覚えていた。「半数以上の人が正反対の意味で用いるから許容。意味を更新するべきだ」と思った。こうやって国語の乱れを気にしない人が増える。誤りを何とも思わない。毎年調査を行う必要があろう。

半数に入る私たちは自力で正せない。幸いにもアイウィルには言葉の専門家・酒井正子がいる。酒井に「間違っている」と指摘されれば「ありがとうございます」と改めている。SNS普及の裏側に日本語崩壊が急速に進んでいる。(正木元