アイウィル 社員教育 研修日程

 

コラム『講師控え室』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

2021年12月号「講師控え室 150

 

「感性」とは、辞書によると〝対象からの刺激を感じとる直感的な能力のこと〟〝感受性〟のことだそうだ。

ある会社の専務。

「私には孫が二人います。そのうちの小学生の下の子が私を呼んで『見て! お山がきれいだよ!』と目を輝かせて言うんです。家の周りは田舎ですから、朝ぼらけの中、雪を被った山を朝日が照らしていく様が本当に綺麗なんですよ」。

厳しい雪国の、朝焼けの美しさを想像してみる。私の実家も負けずおとらずの田舎だ。冬になると、彼方に富士山が見えた。その美しさを、子ども時代の記憶から引っぱり出してきてみたりした。

「それを見ていた中学生の上の子が、『それが何?』という顔で見向きもしないんです。私、とてもがっかりしてしまって」。

年頃なのだ、無理もない。彼女ら三人のやりとり全てをひっくるめて、穏やかな家庭だなと温かい気持ちにさせられる。

ここでいうところの〝感性〟に関しては、単純に言うと弟に軍配が上がるのだろう。美しいものを見て、「ああ、なんて素晴らしいんだろう」と素直に感じ入ることは、言うほど易くない。また、そうした同じ感情を他人と共有することは、さらに難しいことだ。

アイウィルの経営者養成研修の項目には、美(芸術)に対する感性を磨くという課題がある。

一流の芸術作品を鑑賞する。美術館に二ヵ月に一度は足を運ぶ。名画集を開く。一流の音楽を聞く。ライブが難しいならクラシックCDを毎日聞く。

美的感性は、磨けば磨くほど輝く。どう磨くのか、それは本物にどれだけ触れられるかということだ。〝対象からの刺激〟は当然ながら、強ければ強いほど良い。直に対面して、それに心動かされる経験は、人の営みが芸術を生み出し始めた時代から現代まで、絶え間なく人生に彩りを与えてきたのだろう。

話は戻る。何故、専務は兄が朝焼けに感動しなかったことを残念に思ったのか。それは、美しいものを共感できなかったからだ。美を愛でる感情を、分かち合えなかったからである。

あなたの感情を、同じように感じ入ってくれる人はいるか。同じものを同じ眼で見ていてくれているか。美に関する感性を養うことのもう一つの意義は、そこにある。美しいものは誰にとっても美しい。醜いものは醜い。これを判別し、同じ定規で見定めることができる人が身近に、仲間に、会社内にいれば、どれほど心強いだろうか。

最後に美術館に行ったのはいつだったか。コンサートにはしばらく行っていない。できることからでいい。美に触れなければ。
坂本利江子