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染谷和巳の『経営管理講座』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「経営管理講座 389」   染谷和巳

 

謝罪・商売・恕の限界

経営管理講座

 

譲り合いとお互い様の恕の精神は〝礼〟であり、良好な人間関係を保つ潤滑油である。国と国の関係も相手を尊重する礼は欠かせない。しかし力任せに利己的行動をとる相手に恕は通じない。なめられるだけ。日本の将来のために今の中国とは損と犠牲を覚悟し本気で戦う時が来ているのでは。

 

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対中制裁を行わない唯一の国

 

中国は新疆しんきょうウイグル自治区や香港、さらにチベットやモンゴルにおいて文化の破壊、洗脳教育、暴行や人権侵害を行なっている。アメリカやヨーロッパの国の多くが経済制裁を行なっている。日本は対中制裁を一切していない…。

オーストラリアは昨年四月、武漢ウイルスの発生源を第三者が調査することを求めたが、中国は調査を拒否するだけでなく、オーストラリアからの牛肉、大麦、ワインなどの輸入を禁止する措置を取った。

オーストラリアは六つの州と多数の島嶼部からなる連邦国であるが、その州の一つビクトリア州は中国からのインフラ投資を見込んで三年前に「一帯一路」協定を結んだ。今年の四月末、連邦政府のペイン外相は「この協定はオーストラリア国家の外交政策と矛盾しているので破棄する」と発表した。

中国は「この協定破棄は両国の信頼を深刻に損う」と不満を述べ、さらなる報復措置を覚悟しておけと恫喝どうかつした。

外交は軍事力をバックにして成り立つ。オーストラリアは自国だけでなくイギリス、アメリカの軍事力をバックに中国と〝対等〟に戦っている。

話し合いで解決する外交問題は少ない。たとえば北朝鮮に拉致された日本人を取り戻すために「話し合いで」と言うメディアや知識人がいるが、相手は「いつでもお前の国に撃ち込める」とミサイルを何発も撃ちあげて威嚇している。目下、日本は軍事力に代わる経済力があるので輸出入の禁止などの経済制裁を武器として外交を進めているが、話し合いは外交の〝武器〟にはならない。

外交は力と力の対決である。たとえばロシアが北方四島を返さないのは核兵器を擁する軍事大国だからである。日本の経済協力をあてにして返す素振りを見せるが、日本がいくら協力しても返すことはない。何十年にも亘って多くの政治家が交渉しているが、全くの、ムダである。もしロシアが四島返還に応じるとするなら、それはロシアが今の北朝鮮のように貧乏になり国民が飢餓状態に陥った時であろう。

一八六七年ロシアは自国植民地だったアラスカを途方もない安値でアメリカに売却した。フランス、イギリスなどの連合軍とのクリミア半島をめぐる戦争に負け、経済的に疲弊し、国民が飢えにあえぐ時を迎えた。売り値は七二〇万ドル(当時の日本円換算で七二〇万円。現在の貨幣価値で計算すると一億二千三百万ドル)だった。地下資源豊富な広大なアラスカを背に腹は代えられず当座のお金のために売り渡した。

こうした時がまた来る。日本はシベリアなどでの経済協力は一切するな。話し合いの交渉も一切するな。軍事力弱小の日本はロシアが貧乏に耐えられなくなるまで待つしかない。

では日本は中国の他民族迫害にG7(先進七カ国 フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ)のうち唯一なぜ対中制裁を行わないのか。

最近の産経新聞の全国一、一八〇人対象の世論調査。

「中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族や香港の人々が直面する深刻な人権侵害が国際的な問題となっているが、国会決議や制裁などで日本も関与すべきだと思うか」という問いに対する答。

・中国との関係が悪化しても関与すべきだ 二八・四%

・中国との関係が悪化しない程度に関与すべきだ 五四・三%

・関与すべきでない 一四・二%

・わからない、言えない 三・一%

新聞はこの結果を踏まえて「関与が必要八割」と報じた。しかし「中国との関係が悪化しない程度に関与する」とはどのように関与することか。関与しないに等しいのではないか。新聞は「六八%が関与すべきでないと思っている」と報じるべきではないか。

対中依存度が高い日本企業が多い。公明党など中国寄りの政党もある。こうした人は、人権問題より中国との良好な関係を大事にする。中国の機嫌を損ねることはしない。良好な関係を維持するためなら人権侵害には目をつぶる。これが日本の〝世論〟である。だから対中制裁はしない。できないのである。

一九八九年天安門でデモの市民一万人以上(推定)が軍隊に虐殺された。世界中が中国を非難し対中制裁を行う中で、日本のみ対中貿易を重視している経済界の要請もあって、政治家は「中国を孤立させない」と言い、一九九〇年海部総理大臣が訪中。一九九二年天皇皇后両陛下が訪問し、欧米の国際的ニュースになった。〝中国の肩を持つ日本〟はこの時と変わっていない。既に日本は精神的に中国に飲み込まれている。

 

 

なぜ中国に日本は弱腰なのか

 

世界制覇を目論む中国に気を遣い、断固たる意志を示せない日本の政治家や経済界の指導者の気持ちが解らぬわけでもない。

昭和二十年(一九四五)戦勝国アメリカは日本を占領し、政界、財界、言論界、学界などの指導者約二十一万人を公職追放し、新聞やラジオで「日本は悪かった」を叩き込み、学校の教科書を黒く塗りつぶして、子供が自国に誇りを持てない教育を行った。

荒田が小学三年生の時いきなりローマ字の授業が入ってきた。漢字とひら仮名の日本語を辞めて英語を国語とする。その前段階としてのローマ字学習である。今、中国がウイグル地区やモンゴルで異民族に中国語を強制しているのと全く同じことをアメリカは日本に行おうとした。

もし昭和二十五年(一九五〇)朝鮮戦争が勃発しなかったらアメリカのこの占領政策は続けられ、日本はフィリピンと同じように英語圏の属国に組み入れられていたであろう。

共産主義国ソビエト連邦と中国が後押しする北朝鮮と民主主義国アメリカを中心とする連合軍が支援する南朝鮮のこの戦争がなかったら、日本は奴隷国となり民族は滅亡していたかもしれない。

苦戦するアメリカは作ったばかりの「戦争放棄」の憲法を無視して「軍隊を作れ」と日本政府に要求した(当時の吉田茂総理大臣は「経済を優先する」と言ってこの申し出を断ったが)。

自国の近くで起きたこの戦争のおかげで日本は戦争特需に湧き、どん底から一気に経済復興をとげることができた。

昭和二十八年(一九五三)戦争は終わったがその前年の昭和二十七年にサンフランシスコ講和条約が発効し、主権を持つ独立国に復帰する。七年間に亘るアメリカの占領政策は終了し、以後少しずつ〝自分らしさ〟を取り戻していく。

日本が逸早く立ち直ることができたのは、自国の努力によるものではなく、アメリカに共産主義国ソビエト(現ロシア)と中国という強敵が現れたからである。

現在アメリカは日本を同盟国として尊重している(ような)姿勢を示しているが、占領時に日本人に叩き込んだ思想は七十余年たった今も生き続けている。

「日本は中国に侵略して中国人を大量虐殺した。それは償いきれない大罪である」。政治家や経営者はこの固定観念を堅持して、貧しい国中国に大金を供与し、経済援助を続けてきた。

中国が軍事力でも経済面でも世界の大国となった今も日本のこの「頭を下げる謝罪の姿勢」はそのままである。これが現在横暴を極め傍若無人に振舞う中国に対して、日本が唯一〝恕〟の姿勢をとり続ける一つの理由である。

 

 

敵を恕し続けた後に来るもの

 

広島、長崎に原爆を落とし連日の都市爆撃で日本の市民百万人を殺戮さつりくしたアメリカを敵視しないのは占領期の洗脳教育のせいである。

中国に忖度してその非を責めないのもアメリカの教育の効果である。今アメリカは中国を最大の敵と見做して、日本に歩調を合わせるよう求めているが、日本人の六八%が中国の蛮行を非難せず事を荒立てず穏便につき合っていくべしと思っている。尖閣諸島を乗っとられても日本は口で文句を言うだけで奪還の戦争には踏み切らないだろう。

歴史を正しく読み直し考えを改める時が来ている。巨大な悪の国を出現させたのは、中国を甘やかしたアメリカと謝罪の意味を込めて過分の資金を注入して軍事大国にしてしまった日本である。

何事も〝まるくおさめる〟のがいいとする私たちの気質が、危機感にブレーキをかけている。同じ人間だ、まさかそこまではしないだろうと相手の善意と良心を信じている。

こっちが恕の精神で接すれば相手も同じ精神で応じてくれるはずだと願っている。

恕の精神はお人よしの精神だ。