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畠山裕介の『人と話の交差点』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「人と話の交差点 316」  畠山裕介

 

古今無双の女傑

 

-ナンバー2(43)-

 

日本の歴史上〝女丈夫〟で特筆される女性の第一は北条政子だろう。

政子は初の武家政権、鎌倉幕府を開いた源頼朝の妻である。

平氏と戦い破れた頼朝は伊豆に流される。そこで政子に会う。政子の一目惚れらしい。二人はやがて結婚する。

頼朝は武人として図抜けて頭のよい大将だった。

頼朝の考え方と行動は終始一貫していた。中央の政治にも自身の栄達にもいっさい関心を示さなかった。

ただ一点、武士はすべて自分の家来であるという立場だけは譲らなかった。これが頼朝の統治原理であった。

これに反抗する者は、誰であろうと許さなかった。朝廷から官位をもらった弟の義経が殺されたのも、この理由からである。

頼朝と政子には、跡継ぎが二人しかいなかった。二代将軍頼家〈よりいえ〉と三代将軍実朝〈さねとも〉である。

有能無比の頼朝の唯一の弱点が、後継者不足であった。頼朝は武家の棟梁として、自分にも人にも厳しかった。血縁の情などに流されず、部下を裁いた。

気づいたら源氏の嫡流〈ちゃくりゅう〉は、頼家と実朝しか残っていなかった。この二人も頼朝の死後、部下の謀反で殺された。

源氏の血筋は、ここに途絶える。倒幕の絶好機と見た後鳥羽上皇は一気に行動を起こす。承久〈じょうきゅう〉の乱である。

幕府の御家人たちはうろたえ、腰が引けた。当然であろう。相手は天皇の軍隊である。

「錦の御旗〈みはた〉」という。天皇の軍隊という意味である。この国では錦旗〈きんき〉を掲げた皇軍には勝てないのである。

ここで政子が立つ。動揺する御家人たちを集め、側近の者を通じて『最後〈さいご〉の詞〈ことば〉』を大音声で演説させた。

「みな、心を一つにして聞きなさい。これは私の最期のことばです。源頼朝公が平家一門の朝敵を滅ぼし、ここ関東にわれわれの幕府を作りました。それ以来、みなの収入は増え、官位も上がりました。それもこれもすべて頼朝公のおかげです。その恩は山よりも高く、海よりも深い」

御家人たちは声ひとつ立てず、耳を澄まし聞き入る。

「頼朝公の功を思う者は鎌倉にとどまりなさい。院に参じたい者は、ただちに京に去るがよかろう」

このひとことは御家人たちの心を突き刺した。幕府軍はあっという間に一九万騎の大軍となり、後鳥羽上皇軍を打ち破るのである。

源氏はわずか三代で滅んだ。だが頼朝の理想は政子の名補佐により北条家に受け継がれ、百年以上生き続けた。