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畠山裕介の『人と話の交差点』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「人と話の交差点 318」  畠山裕介

 

補佐役の進退

 

-ナンバー2(45)-

 

ナンバー2には、二種類ある。

一つは将来の社長候補である。父親が社長で息子が専務。数年後に専務が後を継ぐようなケース。

もう一つは、将来社長にはならないケース。この人はあくまでも現社長の補佐役の立場を全うする。出処進退が難しいのは、こちらのケースである。

Y社。小さな雑貨商から商売を始め、五〇年で年商五千億円の大会社に成長した。創業社長は八〇歳を超え、なお現役。カリスマ経営者として立志伝中の人物である。

五〇代後半の子息が専務。次期社長は確定路線である。

世の常として、父子は仕事の上でよくぶつかる。そんな時、いつも緩衝材の役目をはたしてきたのが常務である。

常務は六〇代。創業期から社長に追いてきた子飼いの幹部である。社長のものの見方考え方から、小さな癖まで何でも知っている。社長のナンバー2である。「間に入ってきつい立場でしょう」と同情したことがある。

「専務にはいつも言うんです。『私は社長に拾ってもらい、育ててもらった人間です。だから社長が絶対です。たとえ専務の方が正しくても、私は社長につきます。そのかわり専務が社長になったら、私は他の誰よりも忠実なイエスマンになります』とね。それがこの会社で私が生きる道です」と常務は笑って答えた。

その明快な処世上の割り切り方に感心した。しかし世の中、そう都合よくは行かない。

社長にとって優秀有能な補佐役だった常務が、専務にとってもいい補佐役になるとは限らない。むしろほとんど不可能だろう。社長と専務は性格から好みから、何から何まで違うからである。

補佐役に必要不可欠な資質は、じつは明文化できない。あえて表現するなら社長の足りないところを補う機能。社長が自分に求める役割を自分で考えて、言われる前にこなすこと。この程度しか明文化できないのが本質であろう。

Y社の常務の末路はどうなるか。新社長の代になって、しばらくは安泰かもしれない。新社長が遠慮するからである。

先代の子飼いの幹部ほど、新社長にとって鬱陶しい存在はない。それは善悪是非の話ではない。それが人間の本性であり、かつあたりまえのことである

では、古参の幹部はどうすべきか。頃合いを計ってナンバー2の座を自分から降りるしかない。

例えば未練を捨て、役職返上し引退する。これが一番賢明な選択だろう。あるいはまだ必要とされれば、嘱託社員として現場仕事で捨て扶持をいただく道もあろう。

頃合いを見切る。自分から座を降りる。この覚悟が要る。