アイウィル 社員教育 研修日程

 

 

 

<畠山裕介の新刊>

畠山裕介の最新刊『仕事を決める和文力』
畠山裕介の最新刊
『仕事を決める和文力』
人の心を動かす文章を書く方法とは

お求めは全国の書店またはアイウィルまで

畠山裕介の『人と話の交差点』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「人と話の交差点 319」  畠山裕介

 

リベロ 佐野優子

 

-ナンバー2(46)-

 

佐野優子。女子バレーボール元日本代表。身長一五九センチ。エーススパイカー木村沙織〈さおり〉と並ぶと、おとなとこどもの身長差がある。このちびっここそ、日本女子バレー史上最高の「リベロ」である。

世界選手権二回出場。二〇一〇年に銅メダル獲得。オリンピック二回。二〇一二年に銅メダル。ワールドカップ三回。錚錚〈そうそう〉たる実績を残し、二〇一五年ぼろぼろの身体で引退した。

リベロとは、守備専門のポジション選手。スパイクを打つことはできない。サーブレシーブやスパイクレシーブなどの守りだけしかできない。

「なんだ、リベロはボールを拾っているだけなのか?」

そういう感想を持つなら、その人は素人である。たとえばドライブサーブは時速七〇キロを超す。スパイクスピードの場合、これが一〇〇キロに跳ね上がる。いいレシーブをするためには、猛スピードで飛んでくるボールの真正面に立つ必要がある。恐怖でないはずがない。

かつて二メートル近くの外国人選手の強烈なスパイクが、佐野の顔面を直撃した。佐野はその場にバタンと倒れ込み、しばらく起き上がれなかった。脳しんとうを起こしていたのだろう。

こんなことはリベロには日常茶飯である。得か損かの単純判断をすれば、損な役回り。それがリベロという苛酷な立場の宿命である。

いや、それはまだ序の口。リベロの本当の任務は別にある。

リベロは飛んでくるボールのスピードやコースをとっさに読む。そしてセッターがスパイカーにいいトスを上げやすい場所に、返さねばならない。

佐野がナイスレシーブをすれば、エースの木村はスパイクを決められる。佐野のレシーブがまずければ木村のスパイクも決まらない。そして敵チームに点を取られる。

木村は言う。「隣にいるだけで、安心感が違います。たとえば、つぎの一点をどうしても取りにいきたいという場面があります。そんな時に『お願い!』ってひと声かけると、自分はスパイクだけに専念できました。本当に頼りになるリベロでした」

木村にスパイクを決めさせるために、佐野はボールを拾いまくる。佐野は木村のスパイクの必要不可欠な補佐役である。

補佐役の佐野は黙々とボールを拾い続ける。七〇キロのサーブも、一〇〇キロのスパイクを、いやというほど受ける。あざ、内出血、すり傷、打撲で身体は悲鳴をあげる。それでも涼しい顔でボールを拾う。

木村がスパイクを決めてくれる。それだけを信じて、佐野は前に後に右に左に、何回でも何十回でもボールを拾い続ける。