株式会社 アイウィル

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染谷昌克の『経営管理講座』

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

「経営管理講座 429」   染谷昌克

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予期せぬバトンタッチ

七月十八日、弊社主宰染谷和巳が長野の別荘で倒れ頭を打ち、駒ヶ根の病院に救急搬送された。脳内出血の重体であった。徐々に回復し、八月二十六日に東京のリハビリ病院に転院となった。一日三時間、歩く力と体力の回復のリハビリに努めている。社会復帰は早くて二カ月後であろうか。

急なことではあるが、冒頭の理由で今回から染谷昌克が経営管理講座を担当します。
ご不満も多々! あるとは思いますが、何卒よろしくお願いします。

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新人経営者、特に二代目三代目の後継者の悩みは多い。

A社の社長は三十代後半。父親から経営を引き継いで五年になる。社歴は八年。業績は安定している。

社員が自分の方を向いていない。トップに反目する幹部がいる。幹部が辞めて競合会社へ。新たに競合会社を立ち上げた者もいる。

従業員に愛想をつかされたのか。社長として何をすればいいのかわからない。

後継者としての姿勢は「守成」が基本。経営を引き継いでも方向性は変えてはいけない。自分の作った会社ではない。創業者や先代の意思をよく理解し、同じ考えで行動する。

先代を踏襲すればよいのだが、人が変われば全く同じというわけにはいかない。実際に何をすべきかは誰も教えてくれない。引き継ぎ後も、前経営者が経営に干渉することは多い。中小企業ではこれは当然のこと。

新社長としてのリーダーシップを発揮しようとすると、従業員との摩擦が生じやすい。前社長の影響力が強く残っていればいるほど、リーダーシップは発揮しづらくなる。

実は従業員や取引先は現状維持を望んでいる。新社長が会社を自分色で運営しようとすると対立が生じることも少なくない。現状維持は安心安全と思い何らかの変更には抵抗を覚える。

後継者が社歴浅くして経営者になった場合、従業員の見る目は厳しい。抜群の業績や経験がないと、新社長に対して不安を抱く。放置すればやがて面従腹背の関係になる。


承継成功のための五つの条件

二十五年間で五百人以上の後継社長と話をさせてもらった。「上手くいっている」「会社が伸びている」経営者には、ほぼ共通する特徴があった。新社長でなくても参考になる。

一、トップが若い

後継社長は実際に若いが、「若さ」とは歳では表わさない。七十代で若い経営者もいる。

若いというのは活力があるということ。知性が粗削りでも、大きい仕事、困難な仕事を成し遂げていかねばならない。

情熱と活力が欠かせない。「気力」である。若さは時に無謀に走るが、それがまた会社を伸ばす。元気にする。

二、幹部が若い

若い部門責任者がいる。二十代後半から三十代の部課長がリーダーシップをとっている。十年二十年と長期にわたって、社長を支える力となる。

三、権限委譲がなされている

この若い幹部クラスが縦横無尽の活躍をしている。社長は大きな仕事を部長に任せてしまう。任されればやるしかない。幹部クラスは全時間、全精力を仕事に没入する。経験は大きな成長を生み出す。実績と自信を作り出す。

四、教育の徹底

社員が「自分で考え、自分で動く」ようになるため、どの企業も「勉強会・研修」に力を入れている。知らないことを知り、できないことをできるようにする。部下、後輩に教えられるようにもなる。

現代の学校教育、家庭教育からは企業人として持つべき気概は学べない。

伸びる企業は間違いなく、トップの理念を教育で社員に伝えている。また伝わっている。

五、ビジョン、ポリシーが優れている

夢のない会社、目標のない会社が多い。トップが夢を持っていない。会社が何を目指していくのか、聞かれても答えられない。これでは社員の気が沈む。

優れたビジョンは社員が働く動機になる。外の世界に胸を張り誇りになる。やりがいになる。

旗幟を鮮明にすること。これが組織を動かし、力を最大限発揮させる。迷いがなくなる。

会社の思想を言葉で明快に表現し内外に発信する。忠誠心や愛社精神がここから発生することも多い。明文化された思想は大切なメッセージとなる。

以上五点が事業承継後「上手くいっている」「伸びている」会社から感じた条件である。


こんな会社が衰退していく

一方、代が変わって上手くいっている会社ばかりではない。業績が下がる、倒産してしまう会社も少なくない。

こんな状況は危険信号を発している。

社長が権限を委譲できない。社長がすべて自分のやり方でないと気に入らず、管理者が自分の考えでやったことはやり直しさせ責任を追及する。

管理者は萎縮し社長の顔色をうかがうことに専念するようになる。

ビジョンがない会社。

社長の口から理想や高邁な思想が出てこない。経営理念を知らない社員がいる。

社長は時々「のびのびやろう、楽しく働こう」と口にしても、社員は現実との違いに白ける。

これらが続くと社内は、事なかれ主義、給与目当てのサラリーマン社員が蔓延する。幹部クラスにこれぞという人材がいなくなる。

「社内の空洞化」である。恐ろしいのは、社長はじめ役員クラスが、このことに気づかない。問題視しないこと。

このほかにもトップの人格の問題、仕事に比して社員の待遇がよくない、ハラスメント放置、などうまくいかない要因はいろいろあげられる。しかし一言でいえば「経営者の姿勢と質」である。

ここ数年「コロナだったから…」この言葉がトップの目を見えなくしてきた。視線を下に向けさせた。

二〇二〇年世界中がコロナによって大打撃を受けた。多くの業種が死活問題を抱えた。

弊社も瀕死の状態だった。国に助けてもらい、お客様から手を差し伸べていただいたおかげで、今がある。

二〇二四年、止まっていたものが動き出した。「コロナ」の呪文はもう効かない。

止まっていたものを全力で動かしにいこう。ひとりでは動かせないが、会社には社員という同志がいる。

会社の財産は「人」である。人が財産を生み出す。人がいれば会社は伸び、人がいなければ会社は没落する。

人の獲得と人の育成に力を惜しまない会社、それを口でいうだけでなくトップが行動で示していく会社は存続できる。顧客を創り、育てることもできる。

そのトップの考えと行動に感じて「わが人生ここにあり」という社員がたくさんいる会社は、間違いなく伸びていく。


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