株式会社 アイウィル

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染谷昌克の『経営管理講座』

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

「経営管理講座 441」   染谷昌克

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経営者養成研修

経営者の能力とは何か。どこを磨き、どこを鍛えれば経営者としての力が身につくのか。大学の「経営学部」で学べるか。答えは否。優れた経営者の持つべき力とは。令和七年九月十五日に経営者養成研修九名は経営者としての信頼される人間性と人に支持される魅力を身につけ卒業していった。


直球オンリーでは戦えない

起業者の平均年齢は四十八歳という調査記事が出ていた。若い起業家が多いのかと思っていたが、実際は若くして事業を起こすことは難しいようだ。

戦後から昭和五十年代くらいまでの間は、起業者の平均年齢も二十代だった。それも徒手空拳(としゅくうけん)で事業を始めて成功する人が多かった。

大望を胸に、寝る間を惜しんで、人の三倍働く。元手と信用を作り、経営者の仲間入りをするコースが普通だった。

もちろん大望があってよく働いても成功しない人はいた。

私が小学生の頃、自宅の隣に小さな工場があった。工場というより、自宅に機械を置いた作業場規模だったが。

私より十五歳上の健ちゃんが、そこで仕事をしていた。部品を作る機械を購入し、自分で起業したのだ。私の母親は「若いのに独立して、毎日遅くまで仕事をしている。健ちゃんは偉い」と評していた。

健ちゃんは度々「松下幸之助」という人物の話をしてくれた。よく理解できない私に、松下幸之助のやり方や考え方を熱っぽく語ってくれた。いまに自分も大実業家になると胸を張った。

健ちゃんは長い間機械を動かしていた。昼夜を問わず、第二の松下幸之助を志に仕事をしていた。

規模は一向に大きくならない。十五年も頑張っただろうか。四十近くなった健ちゃんは、事業を辞めて勤めに出た。

私は「大望があっても成功するとは限らない」ことを学んだ。

私は若い頃の経験から、会社の経営者というのは、疲れを知らないエネルギッシュな人、ひたむきに我が道を行く人、神経が図太い人というイメージを持っていた。

だがよく考えてみると、大成功者には単細胞の猪突猛進型は少ない。人を圧倒するパワー(気力)があっても事業家として成功するとは限らないのだ。


求められる能力は変わる

弊社主宰の染谷は経営者能力についてこう述べている。

会社を興してゼロからやっていく能力と会社を経営していく能力は、以前は別のものだった。

ファイターの創業社長のうち、会社の成長に合わせて上手く自己変革して、優れた経営者になった人は数少ない。

人が増え、組織ができ、会社の行動範囲、交際範囲が広がる。会社はある規模に至ると人が辞める、人が育たない、いい商品が出ないなどの問題が発生して経営がおかしくなる。

戦後のどさくさ復興期は弱肉強食であり、強いこと、特に精神面が強いことが経営者の第一条件だった。人間性や魅力が欠けていても会社は大きくなった。

一九八〇年代に入ると、アイディア力と営業力が経営者能力の筆頭になった。

営業力は自分を売り込む能力。積極的に自分をよく見せる表現力。相手を納得させる説得力。人間性や魅力が欠けていてもテクニック(技)と気合で間に合う能力である。

求められる経営者能力は、時代、環境と深く関わっている。

現代では創業能力と経営能力は、ほぼ一致している。信頼される人間性と魅力が第一に求められる。

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それを仮に経営者能力と呼べば、経営者能力とはどのようなものか見えてくる。

能力というが決断力や思考力、先見性といった一つひとつの能力ではない。

経営者能力とは総合的な人間の出来である。人(社員)がついてくる人間性。人(客)が支持してくれる何らかの魅力である。

もちろんこれは、知識、教養、視野、行動力、思考力、表現力といった一つひとつの能力と無関係にあるわけではない。また忍耐力や正義感など精神面の能力とも無関係ではない。こうした能力の総合力が人間性を作り魅力を作っている。


総合的人間力が生み出すもの

信頼される人間性と支持される魅力を持っている人は、運をつかむ人である。

成功者に成功の原因を聞くと、多くの人が「運がよかった」と答える。

運を引き寄せる人、運を掴むことのできる人が成功する。成功者の条件に「運」は必要不可欠なのだ。

昔は運は天がもたらしたものだが、今は違う。人がもたらす。組織や社会や情報がもたらす。山の中で外界を遮断しポツンと一人で住んでいては事業家として成功する運はやってこない。

つまり人(組織、社会、情報も含む)のネットワークの密度が濃くなっており、人の協力なしに事業は起こせない。我武者羅にやっても会社を軌道に乗せることは難しくなっている。

成功している若いインフルエンサーを起業家と考えた時。ソーシャルネットワークサービスにより、情報や社会の面は埋まる。成功して稼げるようになると、人を求め「組織」に所属するようになる。

起業の平均年齢が四十八歳と高くなっているのは、それまでに技術や資金はもとよりだが、人間関係や信用といったものを培ってこなければ旗揚げできないことを物語っている。

この人間性と魅力という経営者能力はどのようにして伸ばすのか。

この能力は先天的なものではない。歩んできた過程で芽生え育つもの。経験によって伸びる能力である。ならばこの能力を伸ばす「方法」はある。

優れた人が「何をしたか」「何をしてきたか」を知る。それをまねる。同じことをすればいい。

みんながしている平凡なことの中にも、この能力を伸ばす方法はある。例えば読書。優れた人の経験や学びが詰まったいい本を読むことは考え方を刺激する。考え方を変える。視野を広げる。人間性を養う上で役立たないわけはない。

誰もがしていないことで、やれば誰でもできること。そうしたことの中に経営者能力を伸ばす方法がある。

成功した経営者が「私はこういう変わったことをしている」と教えてくれたこと。優れた人がずっと続けている小さな習慣。優れた人がしてきたこと、していること。この山の中に宝物が眠っている。

もちろんその中には経営者能力を伸ばすこととあまり関係のないこともあるだろう。

吟味して「方法」を集めた結晶が「経営者養成研修」である。



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