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染谷昌克の『経営管理講座』

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

「経営管理講座 436」   染谷昌克

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社長も、部長も、みんな若者だった

今年も待ちに待った〝新入社員〟が入ってくる。採用難のこのご時世、縁あって自社に入社する。最近の若い奴は、などいう前に会社側が真剣に育てる姿勢を持つべし。部下は上司を選べない。今後、金の卵を上手に孵化(ふか)させられるかどうかは、あなたの腕次第!


上司が嫌いなタイプ

テレビで「上司に嫌われる部下」を紹介していた。管理者に「どんな部下が嫌いか」を聞いてランク付けしたものである。

第五位 はっきりしない、優柔不断である

意見を求めても発言しない。イエスかノーか聞くと「どちらでもいい」「わからない」という。仕事に取りかかるのが遅い。行動が鈍い。細かいことまでいちいち指示しないと動けない。

第四位 協調性がない、わがまま

問題が発生し、みんなが残って処理をしているのに「私は関係ない」と帰ってしまう。チームの集団行動に加わらず一人だけ離れている。

仕事に支障がある時に平気で有給休暇を取るなど、組織行動からはみ出す。「この仕事は嫌だ。こっちをやりたい」「これはできない」とわがままをいう。

第三位 暗い

話をしている時、目を合わせずうつ向いている。反応がない。冗談を言っても笑わない。

元気がない。目に精気がない。声が小さい。姿勢が悪い。物事全てに消極的。逃げ腰、尻込み、引っ込み思案。会話を避ける。

第二位 責任感がない

仕事でミスをしても謝らない。失敗を反省せず平然としている。自分の責任だと思っていない。

その日に完了させるべき仕事を、やり残して帰ってしまう。

成績が悪くても工夫しない。考えない。努力しない。

第一位 礼儀知らず

挨拶をしない。「はい」と返事をしない。「すみませんでした」と謝らない。「ありがとうございます」と感謝をしない。

上司にため口で話す。お客さまに敬語が使えない。姿勢態度がだらしない。

以上が嫌われる点のランキング上位である。

管理者は、嫌いな点をそれぞれの言葉でいっているが、五つのうち一つだけ当てはまり、あとの四つは当てはまらないという人はほとんどいない。

この五つは一人の社員を別の方向から見たものである。違う言葉で表現しているだけ。

礼儀ができない人は暗い。協調性がなくワガママであり、責任感がない。優柔不断ではっきりしない。

明るい人は礼儀正しい。自分の意見をはっきり言う。チームのメンバーと協調する。

上司に嫌われる社員とは、一言でいうと〝幼い〟のである。社会人としての自覚がない。組織人としての行動がとれない。一人前の大人に育っていない。すなわち子供である。


誰もが通ってきた道

「今どきの若い者は」という大人の若者批判は二千年前から行われていたというから、今の若者が殊更ダメになったとはいえない。

しかし現代っ子は今までのどの時代にもなかった環境の中で育ってきている。その環境が人間形成に与える影響は大きい。

それは「子供同士が遊ばなくなった」環境である。五歳から十五歳までの少年期に年齢の違う近所の子と遊ばなくなった。

原因ははっきりしている。ひとりっ子、ふたりっ子の家庭が増えた。小学校からの勉強第一主義。塾通いなどで遊ぶ時間がない。スマホでのユーチューブやゲームなど室内でのひとり遊びが主流になり外で遊ばなくなった。遊べる場所も少なくなった。コロナ禍での生活は、これらに拍車をかけた。

近所の子と遊ぶことは重要だろうか。

子供はそこで〝社会性〟を身につける。家のなかや学校では身につけることができない「人としての基本」を身につける。

社会性とは、人に迷惑をかけない、相手を思いやる、助け合う、協力する、約束を守る、嘘をつかないなどの精神態度である。

小さい子も大きい子もいる、年齢がばらばらの子供の群れ。

そこにはリーダー(ガキ大将)がいる。ガキ大将は漫画に出てくるような腕力が強い乱暴者ではない。

ガキ大将は自然にみんなをリードし、他は自然に従う。ガキ大将の条件は①遊びがうまくて強い②弱い者の面倒見がいい③遊び方などで群れが退屈しないようリードする、の三点である。

小さい子や弱い子はガキ大将に畏敬の念を抱く。それは両親や先生に対するのとは別のものである。

大将は他の子たちにとって、凄い力があり、教えてくれる人。守ってくれる人。助けてくれる人である。

この畏敬の念は、大人になってからも、人を信頼する、人を尊敬するという優れた資質として残る。

「子供が育つ」には親や学校のほかに、この遊び仲間の群れが大事な役割を果たしている。


覗いた鏡に映るのは

嫌われる上司のランキングもある。

上位は

一、責任を取らない上司

失敗は部下のせい、成功は自分の手柄にするタイプ。

自分の指示が曖昧だったり、判断ミスが原因でも、決して自分の非を認めない。

トラブル時に逃げる・沈黙する。問題が起きても前に出ず、部下に押しつける。決められない。先延ばしにする。優柔不断。

成果は自分のものにする。チームの成果でも、自分だけが評価されようとする。

二、感情で動く上司

機嫌が悪いと怒鳴る、八つ当たりする、言動が不安定。依怙(えこ)贔屓(ひいき)をする。

三、話を聞かない上司

部下の意見を無視する、自分の考えばかり押しつける、人の話を遮る・最後まで聞かない。

否定から入る。「でもさ」「それは違う」が口ぐせ。自分の話ばかりして、会話が一方通行。

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嫌いな部下と比べると、共通している部分が多い。

部下は上司の鏡なのだ。己のことを棚に上げ、ここがよくない、あそこが悪いという上司。それはそのまま自分の姿である。

部下は上司を選べない。「嫌いだ」などと言う前に、教え育てるのは上司の使命。そのためには部下よりも仕事ができるのはもちろん、知性人格教養において、数段上の力を持たなければならない。畏敬の念を持たれる強い上司になろう。

真剣に本気で育成に取り組み、鏡のなかを覗いてみよう。



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