アイウィル 社員教育 研修日程

染谷和巳の『経営管理講座』

 

人材育成の新聞『ヤアーッ』より

 

「経営管理講座 346」   染谷和巳

 

 

次はパワハラ禁止法

経営管理講座

 

先号の終りに「政府は会社という〝人間形成の場〟を破壊しようとしている」と書き、先々号では「弱者優遇の行き着く先は国家の衰えどころではない。地球上の人類の滅亡である」と書いた。何と大上段のハッタリか、デマゴーグ(民衆煽動家)め!と思うだろう。今号もまだ大上段が続く…。

 

 

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なんでもいじめにして犯罪に

 

ハラスメントばやりである。

セクハラ、パワハラに始まりマタハラ(妊婦いじめ)、モラハラ(モラルハラスメント=言葉や態度行動によるいじめ)、アルハラ(アルコールハラスメント=酒のうえのいじめ)、アカハラ(アカデミックハラスメント=大学で上の者が部下や学生をいじめる)など数えれば三十はあるそうだ。

ハラス(harass)は困らせるという動詞で、ハラスメントはいじめという名詞。困らせるほうが加害者でいじめられるほうが被害者。

日本では三十年ほど前からセクハラという言葉が広まり社会の認知を得て辞書に載るようになった。その後の市民団体や弱者の味方のマスコミがつぎつぎと新しいハラスメントを作り現在に至っている。

スメハラ(スメルハラスメント)は体臭、口臭、香水などで相手に不愉快な思いをさせる意味だが、本人はいじめる意図はないし、被害者も特定の個人ではない。スモハラ(スモークハラスメント=喫煙によるいじめ)はタバコの煙を吹きつけるなどいじめが成立するが、スメハラは異質。今後何でもハラスメントをつける言葉遊びにより、五十も百もできるだろう。

ハラスメントは悪いことだが「悪」をあぶり出す〝正義の味方〟が新しいネタをつぎつぎと捜し出して「これ、いかがでしょう。あるんじゃないですか」と社会に問い掛け、同じ正義の味方のマスコミや知識人が「そうそう、あります。いけないことです」と呼応する。これで新ハラスメントが誕生する。

ハラスメントばやりが昔よりいじめ、虐待、痴漢を〝大事件〟にした。自殺や死亡となると、新聞、テレビ、週刊誌が連日とり上げて、裁判を行い加害者を糾弾する。

現在は幼児や子供が死ぬと「いじめか」「虐待はなかったか」と原因追及に血眼になり、それが原因でないと解ると「何だ、つまらない」とごみ箱に捨てる。

痴漢は人がべったり接触する満員電車を毎日走らせている鉄道会社に五〇%の責任がある。その責任を感じて会社はラッシュ時間帯に女性専用車を設けた。これは弥縫〈びほう〉策の好例である。満員電車も痴漢も以前のまま。線路を走って逃げる男が続出。そのため電車が止まった被害の総額は痴漢男の罪よりはるかに大きい。また痴漢で有罪になりそれが冤罪〈えんざい〉であったことが後にわかるという悲劇も少なくない。女が痴漢にでっちあげて示談金をせしめるという本末転倒の事件も起きている。セクハラが重大犯罪になったからである。

ハラスメントばやりの根っ子は〝人権〟である。弁護士などの人権活動家は弱者保護、弱者救済そして弱者優遇のために戦っている。

その範囲が広がり、今は犯罪者の人権を擁護することも認められている。現在死刑囚は一二〇人いるが十年も二十年も前に死刑が確定した人が、衣食住無料で、読書、テレビ付きで病気になれば病院で治療を受けられるなど優遇されている。明日死刑になる恐怖はほとんど感じなくなっていることだろう。

法務大臣は後に冤罪であったことが判明するのが恐くて執行命令の判が押せない。あるいは自分が殺人者になる脅えが命令をためらわせる。軍人なら任務放棄の罪で裁かれる。私が法務大臣なら過去の負債を消すために一〇〇人いっぺんに判を押す。

無銭飲食無銭宿泊の一二〇人のお客様が常住するホテルの経営を引き受ける人がいるか。国が全費用を負担しているが、経営者ならその膨大な無駄を節減する努力をする。法務大臣が経営者なら待機死刑囚はたちまちゼロになる。

死刑囚も弱者である。弱者は守らなければならない。その死刑囚が何をして死刑になるかは今はもう問題ではない。人みな平等に持つ命、その一個の命を尊重しなくてはいけない。法務大臣以下このように考える人が多いからホテルの宿泊者は増え続けるのである。また精神異常者は障害者であり国が保護の対象とする弱者である。犯罪を犯しても罪を免がれることができる。殺人事件の犯人の罪を軽くするため弁護士は〝精神鑑定〟を要求する。「心神耗弱〈しんしんこうじゃく〉」といった結果が出れば刑が軽くなり弁護士の勝利である。

人を殺す人は百人が百人精神が正常ではない。それを弁護士は精神病に仕立てあげる努力をする。認められれば収入が増える。

もし私が総理大臣なら精神障害者の犯罪は健常人の罪よりも重くする法に改正し、異常者は再犯率が高いので一生刑務所から出られないようにするだろう。

 

 

 

仕事ができない弱者を救うか

 

パワハラ自殺のニュース。

三菱電機に昨年入社した二十五歳の男性社員。

遺書に「私は三菱につぶされました」とあり、両親は一億千八百万円の損害賠償を要求して東京地裁に提訴した(九月二十八日産経新聞)。

昨年四月に入社し十月頃から上司や先輩に質問しても実務を教えてもらえず、みんなの前で「自分の役割は何?」と嘲笑されるなどのいじめを受けた。十一月十七日「人格を否定してくる三菱で働き続ける方がつらいので私は死を選びます」と書き残して社員寮で首をつって自殺した。

電通の女性新入社員が過労自殺した事件と時期や経緯が酷似している。今回の両親はご子息の死後丸一年たってから提訴した点は少し違うが、「子供が会社に殺された」という立ち位置は同じである。

この新聞記事だけでは具体的なことはほとんど解らない。どんな上司なのか。本当に部下が死にたくなるほどいじめたのか。どんな態度と言葉で傷つけたのか。自殺者と同期入社の新人や二、三年目の若手社員はどう思っているのか。そのいじめ上司を社長や上級上司はどう見ているのか。

週刊誌のフリーライターなら取材をしてこれらを明らかにするだろうが、私は詳細を知る気はない。

仕事ができない人は会社にとって困った存在である。

仕事ができるとは①理解力表現力(話す聞く読む書くなどの基礎能力)②体力③精神力(忍耐、勇気など)④5S(整理整頓清掃清潔しつけ)⑤社会性(義理人情、マナーを守るなど)が身についている人で、できない人はこれらのどれかが欠けている人である。

採用の段階で面接などでこれを調べるが、出身校や専門知識などを重視し、大事なものを軽く見るので、会社のお荷物になる困った人がまぎれ込む。

仕事ができない人が厳しい指導を受けるのは当たり前。上司は部下育成の義務があり、この任務を忠実に果たそうとすれば、劣る部下を叱りつけるのは当り前。

学校でも家庭でも叱られたことが一度もない新入社員が、新人研修を終え、お客様扱いが終わり、〝戦力〟の位置に立たされた時、叱られると「人格を否定されたような」屈辱を感じて精神を病む。心が動転して平常の気持ちでいられなくなるので一層仕事ができなくなる。もともと精神が鍛えられていないので会社を辞める決断もできない。

仕事ができない人は弱者である。若くして自殺してしまう人を救わねばならない。悪いのは会社であり上司である。こいつらをこらしめろ!「パワハラ自殺」という造語にはこういう意味がある。

 

 

 

労働局の会社監視が強くなる

 

パワハラの定義。同じ職場で働く人に対し、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為。暴行や傷害のほか、仲間外しや仕事を与えないことなども該当する。上司から部下への行為だけでなく、先輩や後輩間、同僚間の行為も含む。(産経新聞八月二十七日参考)

労働局に寄せられるパワハラ相談は平成十六年は六六〇〇件ほどだったが、二十八年度は七万九一七件と十倍以上に増えている。

現状、労働基準監督署には会社に対して指導改善を促す強制力が与えられていない。そのため政府は法律を作って強制力、拘束力を与えることを検討している。

今まで会社の自主的努力、個々のパワハラに対しては経営陣や人事部が社内裁判によって解決していたが、この法が制定されれば、労働基準監督署が会社に乗り込んできて調査し、判断し、時には処罰を下すことになる。

仕事ができなくて厳しく指導される社員は、冷遇されて将来が暗いので、「パワハラの証拠」を音声や動画でとりためて、お上に訴える時を待つ…。

日本の会社の家族的つながりがなくなり、疑心暗鬼の殺伐たる黒い雲が覆いかぶさる──。

 

 

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